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あれは 1993 年のこと。当時私は Free Software Foundation で働いており、 GNU Emacs のバージョン 19 のベータテストをしていました。 私たちはだいたい週に一度のペースでベータ版をリリースし、 それを試したユーザーからバグ報告をもらうようになっていました。 直接会ったことはないのですが、 いつもすばらしい仕事をしてくれるユーザーが一人いたのです。 彼のバグ報告は常に明快でわかりやすく、問題を解決する大きな助けになりました。 時には彼自身がバグを修正してくれることもありましたが、 それもまた的確なものがほとんどでした。まさに最高の奴だったんです。
FSF では、誰かが書いたコードを取り込む前には、 そのコードの著作権を FSF に渡すための法的手続きをしてもらうことになっています。 見知らぬ誰かさんからもらったコードをそのまま取り込むことは、 破滅への第一歩だからです。
そこで私は、彼にメールで書類を送りました。 「ちょっとした事務手続きが必要なんだ。内容はここに説明してあるので、 まず君がここに署名してほしい。そしてもうひとつの書類に君の雇用主の署名をもらってほしい。 そうしたら君のバグフィックスを取り込めるだろう。いつもありがとう。感謝してるよ。」 こんな内容でした。
彼から返ってきた返事は「私には雇用主はいません」というものでした。
で、私は言いました。 「ああ、そうかい。それなら、代わりに君の通う大学に署名をもらって送り返してくれないかな?」
しばらくして、彼から再び返事が返ってきました。 「あ、あの……。僕、実はまだ 13 才で、親と同居しているんですけど……」
第6章 コミュニケーション / 書いたことがすべて
オープンソースソフトウェアのつくりかた フリーソフトウェアプロジェクトを成功させるコツ
製作著作 © 2005, 2006, 2007 Karl Fogel, 高木正弘, Yoshinari Takaoka(a.k.a mumumu), under a CreativeCommons Attribution-ShareAlike (表示・継承) license (3.0, 2.1-jp)(via anbt)
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